反骨を生きる

   K君の記憶

 

 

革命が現実になると信じていた時代は去りつつあった。

本気で活動を続けているのは

ひと握りの人間だけに過ぎなくなっていた。

よく行く定食屋のおやじや

たばこ屋のおばちゃんに

アパートの管理人の奥さんも

毎日がおだやかに過ごせることを

ありがたく思っていた。

デモや集会からの帰りの電車には

だらしなく足を広げている

ほろ酔いのサラリーマンがあふれていた。

どんなに理想がすばらしかろうと

どれほど将来に向かって真剣だろうと

ふつうの人々が一緒に動いてくれる運動をしなければ

何も変わらないことに気付きはじめていた。

ぼくは失望の淵に沈み込んでいた。

二度と行動を共にすることはないと

組織に別れを告げようとしていた。

それでもあのとき、君は

ひと晩かけて、ぼくを動かそうと説得を続けた。

ぼくは頑なに押し黙り

部屋には気まずい空気だけが満ち溢れ

夜明けを迎える頃、君は去っていった。

二度と君の顔を見ることはなかった。

その日の午後、それまでで最も華々しい行動で

組織はその名を知らしめることになった。

多くの仲間たちは捕まり

組織はしばらく何の活動もできなかったにもかかわらず。

君もそこで捕まったのだろう。

君の消息を知ったのは

あれからひと月以上も経った頃だった。

田舎に帰った君は

雨の中をひとり線路の上を歩き続け

後ろから迫ってきた列車にはねられたとか。

事故なのか、自殺なのか。

何に失望したのか。

それまでの跳ね返りのような行動に

明日を見出すことができなくなったのか。

あるいは日本の将来に夢を抱けなくなったのか。

ぼくとは違う理由で絶望を感じたのだろう。

あれから四十年以上が経った。

日本は戦争をしない国で今日まで来られた。

経済は発展してモノが溢れ

見た目には豊かになったようだ。

だがほんとうに人々は

世の中は進歩したのか。

これからの日本は君やぼくが望んだ国とは

ずいぶん違った姿になってしまいそうな気がしないでもない。

そういえば君は、何という名前だったのか。

K君、君はとうとう

苗字しか知らないままのオルグだった。

青春と呼ぶには暗すぎる思い出のなかに

今も髭面の君がときどき微笑んでいる。

自分の目で現実を見て、自分の耳で人々の声を直に聞く。それが反骨の始まり。

 

 

権力者は常に自分の都合にいいことしか言わない。それは歴史が証明している。偉大な人物であってもそれは同じ。大切なことは、常識を疑い、現実を直視していくことだ。世の中に埋もれることなく、今日を生きてゆく。そして明日に立ち向かう勇気を持とう。

   

 

 

どこから来たのかわからない人たちが

彼らのために支配してできたのが

その国だということが

わかっている人はほとんどいない

それまでそこは

国と呼ばれることなどなく

同じ言葉を話す人たちが

自分たちの生活を守るために

互いに助け合い、ときには争いながら

いくつもの社会を作り上げていた

その人たちが何を望んでいるのか

どんな社会を作っていきたいのか

今はわからなくてもいい

ぼくたちにできることは

その人たちが目指す社会を作るために

ほんの少しだけでいい

共に歩いていくこと

手を差し伸べようとは思わない

手をつないで歩きたい

   未来

 

 

ぼくたちが描きたいのはどんな未来だろう。

誰もが慈しみと愛情で守られ育てられること

生まれや金銭の多寡で決められることなく

誰もが望んだ将来のために学ぶ機会が得られること

どれだけ前を向いて生きようとしているか

どれだけ周りの人の幸せを願っているか

そのために何をしているかで評価さること

そして

誰もが等しく幸せになれることを

一人ひとりが望み、邪魔をしない

そんな未来を描き続けたい。

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now