旅の途中

    五年目からのはじまり

 

 

街がそっくり流されてから五年。

今、ぼくはその場所に立っている。

もう過去の話になっているかもしれないと思いつつ

遅れてやってきたはずなのに

がらんとした風景に言葉を失う。

復興、復興と言葉にするのは

惨状を受け止めることを避けている良識ある人々か

ここに来たこともなければ

来ようともしない人々ではないだろうか。

毎日をここで懸命に生きている人たちには

今日を生き続け

今やるべきことをやらなければ明日が来ない。

怠惰にその日、その日を過ごしているだけでは

何も感じることはできない。

わかっていてもそこから抜け出せない自分を

今ほど情けなく思うことはない。

震災の残影に圧倒されながら

とにかく前を向いて歩くことだけを

心に打ち付けている。

     新しい街

 

 

舗装が終わったばかりのように白い車道。

できたてのようにカラフルな歩道。

あの日から5年が過ぎた今

ようやくできあがったのだろう。

何もかもが押しつぶされ、流された街並は

新しいというより、新しすぎる風景になってしまっている。

ほんとうにあの大災害があったのかと

不思議な思いに包まれ始めていると

街のところどころにある定規のような目印に驚かされる。

人の背丈よりも高いところにあるそれには

津波がここまで到達したと書かれている。

その小さな文字が

ニュース映像で見たあの日のさまざまな光景よりも

心に深く突き刺さってくる。

この町並は新しいのではない。

どんな被害に遭おうとも

どれほど打ちのめされようとも

生きなければならない人たちの

毎日の積み重ねで変わってきたのだ。

悲しみとか、苦しみとかいった

ありきたりの言葉では表せない

深く厳しい現実のなかで今日もまた

街並が少しずつ変わっていく。

 

だが海に近づくにつれて

その様相は大きく変わってくる。

そこには、何もない。

見渡す限りの原っばが海まで続いている。

あの日までは家並が密集していたというが

とても想像することができない。

いつになったらここが生まれ変われるのだろう。

どんな風景になっていくのか

今はなにも見えてこない。

その全体像は

おそらく誰にも見えていないに違いない。

それでも今日から明日へ

人々の営みが続いていく限り

ところどころに新しい景色が作られていくのだ。

何年後か、何十年後か、あるいはもっと先になるか。

誰にもわからなくても

確実に新しい街が作られていくはずだ。

ぼくが再びここを訪れるとき

どんなふうに変わっているのか

今の気持ちを留めておこう。

   カキ小屋にて

 

 

いつまでくよくよしてたって

何も変わらないわ。

答なんか出ないのに

考えていても仕方がないもの。

前へ進まなくちゃね。

いつまでも引きずっていられないわ。

難しい顔をして

深刻なことばかり言っているのはいや。

やらなければならないことが山ほどあるの。

子供だっているでしょ

明るく元気でいなければ

子供も元気に育たないじゃない。

それには笑顔が一番よ。

 

屈託もなく話してくれていると思った。

それなのに

仮設住まいだという。

五年以上になるというのに。

代替えの場所や住まいはないの、と聞くと

海が見えるから、ぽつんとつぶやいた。

 

心の奥底に

言葉では探ることのできない

深い傷があるのだと知った。

消えることのない、消すことのできない

記憶を乗り越えて

微笑みを取り戻せる日は

いつになったらやってくるのか。

わからないままでも

生きていかなければならない。

それだけはぼくも同じなのだろうけれど。

   カキ小屋にて

 

 

いつまでくよくよしてたって

何も変わらないわ。

答なんか出ないのに

考えていても仕方がないもの。

前へ進まなくちゃね。

いつまでも引きずっていられないわ。

難しい顔をして

深刻なことばかり言っているのはいや。

やらなければならないことが山ほどあるの。

子供だっているでしょ

明るく元気でいなければ

子供も元気に育たないじゃない。

それには笑顔が一番よ。

 

屈託もなく話してくれていると思った。

それなのに

仮設住まいだという。

五年以上になるというのに。

代替えの場所や住まいはないの、と聞くと

海が見えるから、ぽつんとつぶやいた。

 

心の奥底に

言葉では探ることのできない

深い傷があるのだと知った。

消えることのない、消すことのできない

記憶を乗り越えて

微笑みを取り戻せる日は

いつになったらやってくるのか。

わからないままでも

生きていかなければならない。

それだけはぼくも同じなのだろうけれど。

生きることは振り返りと

あてのない旅

 

人生を旅になぞらえる人がいる。ぼくは生きることは旅にほかならないと思っている。人との出会い、新しい景色の発見。倒れるまで歩き続けるのが僕の旅だ。それはまだまだ続くから、今もぼくは旅の途中。

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